モヤモヤ座談会 実施レポート
こども家庭庁は、若い世代が将来やライフデザインについて感じている「モヤモヤ」を一人で抱え込まず、対話を通じて向き合う機会として「モヤモヤ座談会」を実施しました。
結婚、子育て、働き方、住む場所、キャリア選択など、人生の選択肢が広がる一方で、「何が正解なのか分からない」「考えなければならないと分かっているが、うまく言葉にできない」といった感覚を抱く若者は少なくありません。
こども家庭庁は、そうした漠然とした不安や違和感を「モヤモヤ」として言葉にし、参加者同士で共有しながら、見方を広げていくことを目的に「モヤモヤ座談会」を実施しました。モヤモヤを解消することを目指すのではなく、言葉にして共有し、別の見方に触れることで、モヤモヤとの距離の取り方や向き合い方の選択肢を増やすことを重視しています。
本レポートでは、2025年12月18日に実施した第1回、2026年2月16日に実施した第2回について、当日の進め方を中心に報告します。当日の様子やアウトプットを具体的にイメージできるよう、進行の流れと議論の一部をあわせて紹介します。
実施概要
事業名:モヤモヤ座談会
主催:こども家庭庁第1回:2025年12月18日
第2回:2026年2月16日両日ともに、事前に参加者から集めた「モヤモヤシート」を基に、少人数のグループワーク形式で議論を行いました。第1回は「1グループあたり4~5名で多様な視点で議論をする」構成、第2回は「1グループあたり2~3名で気軽に議論できる」構成で実施しました。
モヤモヤ座談会とは
モヤモヤ座談会とは、将来やライフデザインについて感じている不安や違和感を持ち寄り、対話を通じて見方を広げていく場です。モヤモヤに対して、すぐに結論づけたり解決したりするのではなく、モヤモヤについて対話を重ねていくプロセスそのものを重視しています。座談会で重視したのは、次の3点です。・発言を否定しない(評価しない)
・急いで答えを出さない(結論ありきにしない)
・背景(なぜそう感じるのか)を丁寧に掘り下げるワークは、基本的に次の流れで進行します。1)モヤモヤの共有(何が気になるのか)
2)共感ポイントの抽出(どこに引っかかるのか/なぜそう思うのか)
3)別の角度からの捉え直し(前提を問い直す/他の見方を考えてみる)
4)アップデートした考え方の言語化(現時点の「受け止め方」を一言でまとめる)アウトプットは「正解」ではありません。議論を通じて、それぞれが感じているモヤモヤを自分なりに捉え直し、考え方がどのように変わったのかを言葉にすることが大切であると考えています。
構成メンバーについて
本座談会には、全国から集まった大学生約20名が参加しました。出身地域、専攻分野はさまざまで、地方出身者、首都圏出身者、文系・理系など、多様な背景の学生が集まりました。ライフデザインYouth Lab.の活動はこちら
また、各回には複数の社会人メンバーも参加しました。社会人には、転職、結婚・子育て、地方での暮らし、キャリアチェンジなどの経験を持つ方に参加いただき、学生の議論に必要な情報の提供や視点の追加を行いました。学生だけでは出にくい、より具体的な判断材料や「実際にやってみると○○だった」といった実体験の視点が加わることで、テーマを捉え直す幅が大きく広がりました。
第1回(12月18日)開催レポート
■ 当日の進め方
第1回は、事前に集まったモヤモヤをテーマ別に整理し、以下の5テーマに分かれてチーム編成を行いました。 ・ライフステージと住む場所
・キャリアとライフイベントの両立
・キャリアデザイン
・結婚
・子育て各チームには社会人メンバーが入り、学生とともに議論しました。進行は、ワークの手順が分かる形で組み立て、議論が感想の共有で終わらないよう、必ず「捉え直し」と「一言まとめ」まで到達する設計としました。
■ ワークの進行(卓内での進め方)
STEP1:モヤモヤの選択(目安5分)
事前に提出されたモヤモヤの中から、当日のテーマに合うものを1つ選びます。各グループのテーマに沿って「これは共感できそう」「逆に意見が分かれそうだ」など、グループで話し合いたいモヤモヤを選びます。STEP2:共感ポイントの整理(目安7分)
そのモヤモヤについて、共感できる点や、そう感じた理由をお互いに共有します。STEP3:別の角度からの捉え直し(目安7分)
「別の立場だったらどう見えるだろう?」「どんな前提があるんだろう?」と問いを立てながら、視点を広げていきます。STEP4:アップデートした考え方の言語化(目安6分)
対話を通して気づいたことをもとに、「こういう考え方もありそうだ」「こんな見方をしてみてもいいかもしれない」といった、新しい受け止め方を言葉にします。
■ 実際の議論の一例(抜粋)
(1)住む場所:「住む場所が子どもの教育格差につながるのではないか」
地方出身の学生からは、「大学受験のとき、親から一人暮らしを反対され、近い大学しか選べなかった」「塾の数が少なく、進路情報が入ってこない」「講演会などの機会が少ない」といった、情報や選択肢の差に関する具体的な経験が共有されました。
一方で、東京出身の学生からは「情報も塾も多いが、競争が激しく受験のプレッシャーで人間関係がギクシャクした」「塾に通う分、習い事の時間は取りづらかった」といった声も出ました。
議論を通じて、「教育格差=地方/都市の単純な差」ではなく、「情報やサービスが集まりやすい構造」「同じ都市部でも地域によって教育への価値観が異なる」といった論点が整理されました。また、「中学受験は子どもの意思というより親が環境を用意するかで決まりやすい」「親の見栄や固定観念が子どもの選択肢を狭めることがある」といった指摘も出ました。
このチームでは最終的に、焦点を“場所”から“触れられる情報”へ移し、次のようにまとめました。・住む場所自体よりも、体験していない世界も含めて選択肢に触れられる情報環境が重要
・親の価値観だけでレールを敷かないために、外部情報に触れる機会を意識的に作る
(2)キャリアと子育ての両立:「自分のキャリアと子育ての両立が不安」
学生からは、「育休に入ると一回仕事から切り離される感じがする」「戻ったとき仕事についていけるか怖い」「キャリアは一本の道で積み上げるものと思い込んでいた」といった不安が率直に語られました。
これに対して社会人参加者からは、「育休は区切りでもあり、これを機にやることを変えるきっかけにもなる」「親になった視点はどんな仕事でも活きることがある」といった見方が提示されました。
議論の中で、「キャリア=一本道」という前提を捉え直し、「子育てはキャリアを止める出来事ではなく、新しい種類の経験として積み上がる」と考え方がアップデートされました。
最終的には、以下の一文に整理しました。・子育てはキャリアのブレーキではなく、別の道が拓けるきっかけにもなりうる
(3)結婚:「恋愛と結婚の壁が怖い」
学生からは、「自立してからでないと結婚してはいけない気がする」「経済的にも精神的にも自立できていない感覚がある」といった声が出ました。別の学生からは「ずっと一人の人を好きでいられる自信がない」「人と一緒に暮らすのが得意ではない」といった、実体験に基づく不安も共有されました。
社会人参加者からは「結婚前は後戻りできない選択というイメージが強かった」「子どもがいる場合の影響も考えると簡単には決められない」という実感が語られました。
結婚への不安が「後戻りできない」「自立できていない」「同じ人と暮らし続けられるか」の3点に整理されました。そのうえで、「結婚するために完璧な自立が必要という前提を外す」「結婚後に支え合いながら自立していく見方もある」「決めたら“正解にする”フェーズへ切り替える」といった捉え直しが行われました。
このチームでは、結婚を“壁”ではなく“坂道(=過程)”として言い換える形でまとめました。ワークの結果詳細はこちら
第2回(2月16日)開催レポート
第2回では、1グループ当たりの人数を2~3名に減らし、少人数で気軽に議論できる設計で実施しました。■ 変更点(第1回→第2回)・1チーム当たりの人数を少なく設計(1チーム2~3人で構成)
・ワークシートの構成を簡易化(記入欄を絞る)
・「捉え直し」と「考え方のアップデート」を中心に進行
■ 当日の流れ第2回は、次の流れで進行しました。1)本日のワーク説明
2)社会人インプット(ライフヒストリー共有+質疑)
3)グループワーク(+必要に応じて撮影等)
4)講評/共有特に2)社会人インプットでは、参加学生が「自分たちのモヤモヤに関係する情報を取りにいく」時間として位置づけました。社会人が自身の経験を一方的に語るのではなく、運営側が深掘り質問を挟み、最後に学生から質問を募る形で進めました。これにより、後半のワークで判断材料が増え、捉え直しが具体化しやすくなりました。■ 簡易ワークの進め方(シート設計)
第2回のワークシートは、議論の焦点を次の2点に絞っています。・モヤモヤの捉えなおし(そもそも○○なのでは?/○○とも考えられるのでは?)
・モヤモヤに対するアップデートした考え方(一言でも箇条書きでも可)■ 実際の議論の一例(抜粋)
(1)「子育てにかかる費用を考えたら、子どもを持つのって割に合わなくない?」
議論ではまず、「子どもを持つことは逆算して決めるプロジェクトなのか」「想像がつかないから不安が先行する」といった声が出ました。そこから、「そもそもコスパで測る対象なのか」という問いが置かれ、「周りの意見よりも、自分にとっての幸せが何かを内省する必要がある」という方向に整理されました。アウトプットは、コスパという物差し自体を問い直す一言にまとまりました。(2)「仕事に生きるか、趣味や生活の安定をとるか、どちらが幸せになれるのか」
参加者からは、「幸せは一種類ではない」「仕事か暮らしかの2択にしている時点で前提が強い」「0か100で決める話ではない」といった意見が出ました。就職活動では周囲の目が気になり選択肢を狭めがち、という実感も共有され、最終的に「早い段階で幅を狭めず、考え続ける」「人生の責任を取るのは自分」という整理になりました。(3)「結婚後に転勤を言い渡された場合、どうするべきか?」
「今の生活が崩れる前提で捉えていないか」という問いから始まり、転勤期間、戻れる可能性、昇進等の条件整理が判断材料になるという意見が出ました。加えて、「不確定さこそが人生の豊かさにつながる側面もある」「変化は良い負荷にもなりうる」という捉え直しが生まれ、前向きな一言にまとめられました。ワークの結果詳細はこちら
最後に
こども家庭庁は、本座談会を通じて、若い世代が抱えるモヤモヤを「個人の悩み」で終わらせず、対話によって向き合う機会を提供しました。
参加した学生からは、
「みんな同じようなモヤモヤを抱いていると知れただけで心が軽くなった」
「少し年上の社会人の先輩と話す機会は普段少なく、新しい視点を得られた」
「普段、モヤモヤとしっかり向き合ったり言語化する機会がないので、自分自身のバイアスを自覚するいい機会になった」
といった声が聞かれ、モヤモヤそのものが消えるわけではなくても、共有し、言葉にし、見方を増やすことで、受け止め方が変わる実感が得られた様子がうかがえました。
こども家庭庁は今後も、若い世代が自分らしいライフデザインを考えるための対話の機会づくりと情報発信を継続してまいります。
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「モヤモヤ座談会」実施のコツやポイント
本資料は、こども家庭庁が2025年12月と2026年1月に実施した、大学生約20名を対象とする全2回の「モヤモヤ座談会」での実践をもとに作成したものです。企画・運営を通じて得られた気づきや発見をもとに、イベント実施の際のポイントや工夫を整理しました。各地域や目的に応じて調整いただくことを前提に、参考情報としてご活用いただければ幸いです。