このページの本文に移動
みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 04

管理職×不妊治療のモヤモヤ! 管理職ながら妊活、そして出産。つらい時期を乗り越えられた理由とは?

30歳で不妊治療に取り組み、後に1児の子をもうけたSさん。会社で管理職として働きながら通院する日々は、涙が出るほどつらかったそう。職場の人と向きあい困難を乗り越え、産休・育休を経てフルタイム勤務に復帰。新たな目標を胸に邁進しています。突破口となった出来事や、子どもを授かった現在の心境を伺いました。

SHARE
X
facebook
LINE

PROFILE

S.Yさん

33歳

京都の大学を卒業後、全国に拠点を持つメーカーに入社。入社以来、転勤で関東内を転々とし、現在は横浜市在住。社内のEC事業部に立ち上げから7年以上関わり、2023年に課長に就任。プライベートでは2019年に社内結婚し、管理職就任を打診されたのと同時期に不妊治療を開始した。32歳で長男を出産し、1年以内に管理職として復帰。現在はフレックス勤務を活用しながら、管理職として育児と仕事の両立に奮闘している。

不妊治療を始めた矢先、管理職の打診が。
仕事と治療、両立への不安

現在の会社では管理職を務めているそうですね。新卒入社だと伺いましたが、入社のきっかけはなんだったのでしょうか。

学生時代にホームセンターでアルバイトをしていたのですが、働きながら「日本のメーカーが作る商品って品質が高いなあ」と常々感じていて。だんだんとメーカーで働くことに興味を持つようになりました。就職活動で受けたのも、メーカーが中心です。今の会社はそこまで規模が大きいというわけではないですが、裁量大きく仕事ができて面白いんじゃないかと思い、入社を決めました。

入社してからは、どのようなお仕事を担当されてきましたか。

関東の各事業所を異動しながら、営業やマーケティングなど幅広い業務を担当してきました。2017年にはEC事業部の立ち上げメンバーとして参画し、以降は同部署で勤務を続けています。人間関係がうまくいかず転職を考えたこともありましたが、仕事自体にはやりがいを感じているので、これまで続けてこられたんだと思いますね。

管理職になったのは、いつ頃ですか?

2023年の春、31歳のときです。実はその数年前から、「次はあなたが管理職になる番だよ」と上司からは言われていて、準備は進めていたんです。立ち上げから関わっている部署ですし、継続してここで働けるなら幸せだなあと前向きに受け止めていたのですが、いつ管理職になるか、具体的なタイミングについては直前まで分かりませんでした。実際に打診を受けたのは2022年冬のことです。

打診されてから管理職になるまで、半年足らずだったんですね。割と急な環境変化だと思うのですが、不妊治療はいつから始めたのでしょうか。

それが本当に偶然なことに、ほぼ同時期でした。夫とは2019年に結婚し、子どもは以前から望んでいましたが、「まずは結婚式を終えてから考えよう」と話していました。その後、2021年にようやく挙式をし、自然妊娠を試みましたが、1年たっても授からず……。人生設計的にも本当は20代で子どもを生む予定でしたし、このまま自然な形で妊娠を待っていると年齢も重なっていくだけだと思いました。であれば、「より可能性が高い手段を取ろう」ということで、クリニックで不妊治療を始めることに。ちょうどその決断のタイミングで、管理職への打診がありました。

なんとすごいタイミング!不妊治療について、上司には相談しましたか?

はい。「ちょうど今、子どもが欲しいと思っている時期なので、仕事と治療を両立できるか正直不安です」と伝えました。上司は「その時々でちゃんと相談してくれたらいい」と言ってくれましたね。ただ、その上司はすぐに別の部署に異動することが決まっていたので、正直不安ではありましたが……。

「話してくれてありがとう」
苦しい日々から救ってくれた仲間の存在

不妊治療と管理職の両立は難しかったですか?

とっても難しかったです。当時、管理職になりたてで右も左も分からないまま、がむしゃらに働いていた私には、とにかく心の余裕がありませんでした。平日は17時に仕事を切り上げて通院していましたが、人工授精など治療の段階が上がると「明日の午前中に来てください」といった急な呼び出しがあることも。毎日カレンダーとにらめっこしながら予定を調整していましたね。治療そのものも負担が大きく、ホルモンを補助する注射や内服で、体力的にきついものがありました。

病院探しも苦労しました。最初の病院は対応が合わず精神的に参りましたが、次に出会った病院の先生は気さくで話しやすく、それが大きな救いになりましたね。

治療において、先生の存在は大きいですよね。当時、他に相談できる人はいましたか?

はい、夫や実家の母に相談することはありました。ただ、本当の理解を得るのは身内でも難しいんだなと感じましたね。例えば、不妊治療中は生理が来ると本当に気が落ち込むんですけど、そんな私を見て夫は「苦しかったら、もうやめたほうがいい」と言うんです。この言葉は、これまでの努力を否定されたような気分になったり、決断を自分だけに委ねられたような気になったりと、すごくつらいんですよね。無理をしてほしくないという夫の気持ちは理解できるんですけど……。

なかなか周りの人に理解してもらえない。その苦しさを、どのようにして乗り越えたのでしょう。

勇気を持って職場の人に相談をし、最終的に職場の理解を得られたことが、自分にとっては大きかったですね。実は、デリケートな話題でもあったので、最初は同じ部署の人たちに不妊治療のことを伝えられていなかったんです。唯一相談していた上司も他部署へ異動してしまい、次の上司は部付の部長という特殊な立ち位置。しかも男性だったため、距離も感じて打ち明けづらく、悶々とした日々が続きました。

そんなあるとき、電車に乗っていると突然涙があふれてきて……。「このままではまずい」と自分でも思い、助けを求めたのが人事部のとある女性でした。過去にその女性からコーチングを受ける機会がありまして、何かあれば相談できるくらいには連絡を続けていたんです。勇気を出して相談してみると、「Sさんさえよければ、メンバーに話した方が、気が楽になるかも」と勧められました。それで上司も交えて相談の場を設けてもらい、部下にも伝えることにしたんです。

職場に助けを求めることができる人がいて、よかったです。部下の方々の反応は?

みんな「話してくれてありがとう」という感じでした。突然休むこともあったので、何かあるとは感じていたみたいです。ただ相手が上司ということもあり、なかなか聞きづらかったようで、だから言ってもらえてよかったと。それで私も気が楽になって、それからはつらさを乗り越えられるようになりました。ある年上の部下からは、「自分も昔、不妊治療と向き合ったことがあった。私は諦めたけれど、あなたは頑張ってね」と打ち明けてもらえて、その言葉もだいぶ励みになりましたね。

「出産後、管理職に復帰した女性」として、
社内のロールモデルになりたい

その後、治療の経過はいかがでしたか。

ありがたいことに子どもを授かることができ、産休をして、2024年8月に長男を出産。その後、育休に入りました。治療期間はトータルで1年半ほどでしたね。

産休・育休後のご自身のキャリアについても気になるところだと思うのですが、復職後の予定については、会社と話をしていたのでしょうか。

「今の管理職のポジションは残しておくよ」とは言っていただけました。仕事内容は好きだったので、同じ部署に戻してもらえるという点はありがたかったです。ただ、管理職で産休・育休に入って、また管理職として復職するという前例が会社の中でなかったので、“本当にできるかな”という不安はありました。管理職としての責任を果たさなければならないという思いもあって、プレッシャーを感じていましたね。

出産後、実際にはどれくらいで復職しましたか?

出産してから10ヶ月後の2025年の6月には、フルタイムで復帰しました。本当はもっとお休みをいただいて、長く子どものそばにいてあげればよかったのですが……。つい責任感と焦りで、8月の繁忙期にまでには復職しないといけないと自分で決めてしまって、復帰直前になってからものすごく後悔しましたね。なんでこんな決断しちゃったんだろうって。4月には子どもを保育園に預けたんですけど、“こんなに小さいのに保育園に入れてしまってごめんね”と毎晩泣いていました。

仕事への責任感と、お子さんへの思いで引き裂かれるような気持ちだったんですね。現在は、仕事と育児の両立はどのようにされているのでしょうか。

夫と保育園の送り迎えを分担したり、フレックスタイム制度を利用したりして、なるべく早い時間に退勤することで、子どもと過ごす時間を少しでも増やせるようにしています。在宅勤務の場合は、子どもを保育園まで送ってもらうのは夫にお願いして、私は8時から仕事をスタート。定時から1時間早い17時で仕事を終わらせて、保育園まで子どもを迎えに行っています。「時短勤務にしないの?」と言われることもあるのですが、結局仕事量は変わらないし、給与は減るのに残業するのもちょっとなと思って(笑)。フルタイムで復職して、フレックスタイム制で調整することにしました。

職場に復帰された今、これからどのような未来を描いていきたいですか。ご家族のこと、キャリアのこと、それぞれ考えていることを教えてください。

今後は子どもの成長を中心に考えて、家族と触れ合う時間を増やしていきたいと考えています。キャリアの面では、「部長になりたい」といった明確な出世欲は正直ありません。それよりも、これまで社内に前例がなかった「産休・育休を取得し、管理職として復帰した女性」のロールモデルとなる事例を作ることができたらいいなと思いますね。

きっと後輩たちにとっても、Sさんの存在は大きな励みになりますよね。

やっぱり不妊治療の相談ができなかった時期が一番つらかったので、「もっと周りの人を頼っていいよ」「怖がらずに相談していいんだよ」とは言ってあげたいですね。相談をすることで私もすごく救われましたし、今の部署でも、何かあれば相談しあえるような雰囲気や関係性を作っていきたいなと思っています。

SHARE この記事をシェアしましょう
  • X
  • facebook
  • LINE