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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 16

離島移住×暮らし方のモヤモヤ! 三度の転職も、都会疲れ。旅先の離島で見つけた、自分らしい生き方

憧れて飛び込んだ美容師の世界。しかし、過酷な労働の末2年で退職し、Iさんは大きな挫折を味わいます。職を転々としながら道を探す中で、彼女がたどり着いたのは、地元・愛知から遠く離れた奄美大島(鹿児島)でした。数々の壁があると知りつつ、なぜ移住を決意できたのか。その胸のうちにある、“第2の人生”への覚悟を追いました。

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PROFILE

I.Hさん

37歳

愛知県出身。名古屋で美容師アシスタントや古着店スタッフなど、さまざまな仕事を経験する中で、都会の騒がしさや人混みによるストレスから離れたいと感じるようになる。27歳のときに訪れた奄美大島に魅せられ、移住を決意。環境を整え、32歳で移り住む。約1年後に奄美大島の男性と結婚。現在、島の就労支援施設で支援員として働きながら、婦人会の副会長として、地域活動にも力を入れている。

憧れの美容師を2年で辞め、挫折 
職を変え続けた20代

32歳で地元の名古屋から奄美大島に移住されたということですが、島に来る前まではさまざまな仕事をされていたようですね。

はい。ただ、どれも長続きはせず……。振り返れば、“何者かにならなきゃ”という焦りを常に抱えて過ごした20代だったと思います。最初に就いたのは、美容師の仕事です。私が高校生の頃に「美容師ブーム」というのがあって、自然と美容師を目指すようになりました。専門学校を経て、20歳で憧れの美容師に。しかし、実際に働いてみると、私の職場が想像以上のハードワークで……。朝8時に出勤して、家に帰るのは夜11時という日々。私の考えが甘かったのかもしれませんが、次第に体がついていけなくなり、2年ほど働いて辞めることにしました。美容師は難しいと考えて、次に始めたのが古着店のスタッフです。たまたま好きだったお店で従業員を募集していたのと、前職よりも無理なく働けそうな環境だったので、応募してみました。実際に働いてみるとお客さんとの交流がすごく楽しくて、労働時間も長すぎず快適な職場ではあったのですが、結局そこも2年で辞めることになりました。

理想の職場に出合えたわけではなかったんですね。古着店を辞められた理由はなんですか?

仕事は充実していたのですが、社会保険のない会社だったので、25歳を迎えたときに、ふと“ずっとここにいてもいいのかな”と不安がよぎったんです。もっと福利厚生が整っている職場で働きたい、でもまったく新しい業界にチャレンジする勇気もない。そこで、美容師は難しいけど受付の仕事ならできるかなと思い、転職して美容院の受付の仕事に就きました。そこは社会保険もある会社で、望み通り安定は手に入れられました。でも美容師時代と同様、拘束時間が長くて、勤務時間は1日12時間。働き始めて4年近くがたった頃に、もう“働く”ということ自体が嫌になってしまい……ちょうどその頃は、結婚を見据えてお付き合いしている方もいましたし、今後は“稼ぐ”ということは意識せず、ただ楽しい仕事がしたい。そう思って、趣味のヨガを生かせる職場として、ヨガスタジオに転職しました。

募る“焦燥感”の先に見いだした 
島への移住という選択肢

悩まれながら道を模索されてきたんですね。そこから、奄美大島に移住するきっかけはなんでしたか?

美容院の受付として働いていた27歳のとき、ふと一人旅がしたくなり、訪れたのが奄美大島でした。なんとなく南の島に行きたくて、でも沖縄は一度行ったことがあるから……それぐらいの理由でしたね。なんのあてもない旅でしたが、たまたま会った地元の人がご厚意で島を案内してくれたんです。その旅を通じて私はいっぺんに奄美大島を好きになりました。

昔から田舎に住みたいという願望はあったので、移住という選択肢も浮かびました。でも、そのときは島にある仕事の収入で生きていける自信がなかったので、無理だなと思って諦めていました。考えが変わったのはヨガの仕事を始めてから。“仕事にプラスして、ヨガを副業にすれば生きていけるんじゃないか”と、ふと思いついたんです。そこで、自分の気持ちを確認するために、もう一度奄美大島を訪れてみました。そのときに“やっぱり、ここがいい”と感じられたので、移住を決意したという流れです。

住みたいと思えるほど魅力的だった奄美大島。一体、何が決め手だったのでしょうか?

よくそれを人に聞かれるのですが、自分でも分からないんです。本当に直感というか、自分がなじむ場所に出合ってしまったという感じですね。

強いて理由を挙げるなら、都会のような、人がたくさんいる環境に疲れてしまったから。私には大きなストレスだった満員電車での通勤も、奄美大島にはありません。また、“自分が劣等感を抱えなくてもいい場所”と思えたことも、大きかったと思います。名古屋にいると、周りの友達や知人が自分のやりたいことを見つけて、どんどんステップアップしていく姿が、意識しなくても目に入ってきます。それに比べて私は何度も仕事を辞めるし、挫折してばかりだし……。とにかく当時の私は、そういった環境から逃げ出したかったんだと思います。

人生の新しいスタートを切れそうな場所、ということで奄美大島を選ばれたんですね。移住に際して、どのような準備をされましたか?

自分の中で1年という期間を設けて、準備を進めました。まず、移住のための資金づくり。ヨガの仕事は続けながら、副業も始めてお金をためました。そして、家と仕事。奄美大島に何度か通いながら、最初に私を案内してくれた地元の方のつても頼って探しました。そんな中で今の就労支援施設の仕事を見つけることができ、住む場所も移住の数週間前というギリギリのタイミングでしたが、なんとか確保することができました。

ゼロから衣食住を確保するのは大変ですよね。遠く離れた場所に住むことに対するご家族の反応はいかがでしたか?

両親は私が中学校の頃に離婚しているのですが、25歳くらいまで一緒に住んでいた母には特に何かを言われることはありませんでした。ただ、言い出せないだけで、複雑な思いはあったかもしれません。“もう止められない”と思っていたんでしょうね(笑)。父からは最初反対されましたが、最終的には理解を示してくれました。また、当時お付き合いしていた方には、今は結婚よりも移住を優先したいことを伝え、お別れすることになりました。

やっと見つけた自分の居場所 
だからこそ、自分の手でこの場所を盛り上げたい

家と仕事を見つけて、ようやく移住ができたわけですが、実際に住んでみてどうでしたか?移住の“理想”と“現実”のギャップはありませんでしたか?

それが全然なかったんです。例えば、移住の失敗談として、人間関係の濃さや距離感が合わなかったという話はよく聞きますよね。私が住んでいる地域も、犬の散歩に行ったら道端で会った人が野菜をくれたり、いきなり玄関を開けて「いるー?」と訪ねてくる人がいたり、距離感はすごく近いのですが、もともとそういう生活には憧れがあったので、最初から抵抗はありませんでした。

地域の人も、移住者の私を温かく受け入れてくれました。私の住んでいる地域では、年間を通じてさまざまな行事があるのですが、ある行事に参加してみたとき、婦人会の方々が「ヨガしてるんでしょ?私たちもしてみたい」と声をかけてくれて。一緒にヨガをする中で、地域に溶け込むことができました。移住して1年後に、島で出会った現在のパートナーと結婚したのですが、夫は島出身なので、そこからさらに地域の人々と関わりやすくなった気がしますね。

島の人と結婚するということで、地域に根を下ろすという側面もあると思うのですが、そこへの躊躇(ちゅうちょ)はありませんでしたか?

移住をした時点で地元に帰る気はなかったので、むしろ好都合という感じでした(笑)。また幸いなことに、義理の両親も型にとらわれない方々でしたので、“島の嫁だからこれをしなければいけない”といった重圧を感じることなく日々を過ごせています。

そして、地域に深く根を下ろしたことで、島の文化や行事にも関心を持つようになりました。「八月踊り」という伝統の踊りがあるのですが、少子高齢化により、担い手がどんどん減少しているんです。そこで、伝統継承のため、同世代の夫婦と協力して集落に呼びかけ、昨年から毎月練習会を開いています。最初は集落のおじい・おばあも、“できるわけない”くらいの感じで遠巻きに見ている方が多く、いろいろな意見がありました。それでも1年くらい継続してだいぶ形になるにつれ、それをお年寄りが心から喜んでくれるようになって、とてもうれしかったですね。現在は、住んでいる集落の婦人会の副会長を務めていて、別の行事の運営にも関わっているのですが、同じく大きなやりがいを感じています。

今振り返ってみて、奄美大島に移住するという選択は正解でしたか?

そうですね。ここに来てから、本当にストレスはなくなりました。満員電車に乗らなくていい。成功する同級生と比較して、自分に焦りを感じることもない。欲を言えばもう少し賃金が高かったらとは思いますが、ぜいたくなく生活する分には十分です。

自分よりも長くこの土地に住んでいらっしゃる地元の人々の意見をまとめるのは、もちろんそう簡単なことではないですし、少子高齢化という難しい課題もありますが、ここがようやく見つけることができた私の“居場所”。だからこそ、この地域をもっと盛り上げていきたいですし、ここに住み続けながら集落のこれからをずっと見守っていけたらと思っています。

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