病気×メンタルケアのモヤモヤ! 22歳でがんが発覚。持ち前の明るさで向き合った療養生活
22歳のとき、卵巣に悪性の腫瘍が見つかったAさん。発覚当初は、持ち前のポジティブな性格で病気を受け止めますが、抗がん剤の影響で髪が抜けた瞬間、どん底へ。初めて家族や彼氏に涙を見せますが、周囲の“意外”な反応を機にポジティブ思考へ転換できたのだとか。病を乗り越え“強く優しく成長できた”今、自分で自分の気持ちを前向きにする“魔法”について伺いました。
PROFILE
A.Sさん
25歳
山形県出身。兄と姉、妹の4人兄妹の6人家族。幼少期からおてんばで、小学生のときには大好きなおばあちゃんを驚かそうと飛び出し交通事故に遭遇するも、短期間で復活。中学では陸上部、高校では女子サッカー部に所属。卒業後はジムのトレーナーを経て、念願だった介護職に就くが、就職して1年目に卵巣がんが見つかる。手術と4ヵ月の抗がん剤治療を経て職場復帰。趣味はK-POP音楽の推し活と料理、お菓子作り。

おなかの違和感から、卵巣がんが発覚
ポジティブキャラでも隠せなかった孤独感
体の異変に気づいたときのことを教えてもらえますか?
ある日、おなかがぽこっと出ているのに気付いたんです。他に自覚症状はなかったので妊娠したのかなと。母親に「生理は来てるけど、妊娠してることってある?」と聞いたら、「それはないよ」と。太ったのかなと思ったんですが、寝転がると少し痛いので、近所の内科に行ってみたんです。そこですぐ大きな病院の婦人科に行った方がいいと言われ、診てもらったら、右側の卵巣に20cmの腫瘍が見つかりました。手術しないといけないけれど、悪性か良性かはしてみないと分からないと。もともと私は楽観的なタイプなので、まあおそらく大したことないだろうと思っていました。ただ、おなかを切らないといけないので、体に傷が残るのはいやだな……とそっちが心配でしたね。
その手術を待たず腫瘍が破裂し、緊急手術になったそうですね。体のつらさはもちろん、悪性か良性か分かるまで、不安だったのでは?
もうなっちゃったし、しょうがない。“ま、大丈夫でしょ!”と、私も家族も思っていました。そしたらお医者さんから、「悪性です。今後、生きるために、抗がん剤をしないといけません」と言われて。“え、悪性って?”“今後生きるためって何?”って、頭の中が真っ白になりました。「今後もし妊娠をしたいのなら、今のうちに卵子を凍結した方がよいので、考えておいてください」と一気に話をされ、言葉が頭に入ってこないし、涙が出る暇もなかったです。母親に電話で伝えながら思ったのは、“自分でよかったな”ってこと。親や身近な誰かががんになったら心配してしまう。でも、自分なら何があっても“絶対に大丈夫”という変な自信が昔からあって。小さい頃からおてんばで、けがをしたり事故に遭っても、いつもへっちゃらでしたから。
突然の告知に混乱しながらも、しっかりしなきゃという思いが伝わります。ご家族はどう受け止められたのでしょうか?
父以外、みんな医療関係で働いているので、「そうなんだね。抗がん剤は、いつから?」と冷静でした。家族も彼氏も誰一人、不安そうな顔をしたりネガティブなことは言いませんでしたね。母は、「神様は耐えられる人にしか大変なことを与えないから、大丈夫だよ」って。私も「そうだよね!」って。そのおかげで、家の中が暗い空気になることはなかったです。
抗がん剤治療に卵子の凍結……。働きながら、考えなければいけないことがいっぱいですね。
電車の中が一番つらかったかな。抗がん剤治療の前に卵子凍結をすることになったのですが、そのために毎朝、出勤前に県外の病院まで電車に乗って通わなければならなかったんです。いろんな人が乗っているから、「みんな元気だな。幸せなんだな。誰も私のつらさは分かんないよね」って。そんなことを思ったのは初めてで。職場(病院)に着いたら、今度は患者さんのお世話をしなくちゃいけない。私もつらいんだけどなって。家族の前では泣かないようにしていたんですが、電車の中で、泣いたことがありました。
抗がん剤の治療が始まったのはコロナ禍だったとか?
そうなんです。しかも21 歳の誕生日の翌日から始まったんですよ。こんなことってある!?って悲しかったです。薬の影響で吐き気はあるし、体はむくむ。携帯も見たくもないし、本にも集中できない。ずっと病室の窓の外を見ていました。家族ともガラス越しでしか面会すらできなくて、本当に孤独でしたね。
髪の毛が抜け、“何も怖くなくなった”
治療期間は美容・推し活・勉強にまい進
抗がん剤の治療について聞いてもいいですか?
1クール目の抗がん剤が終わって家に帰り、お風呂でシャンプーをしたら、痛みもなくすーっと髪の毛が抜けたんです。その瞬間、ゾワっとして、ああこれか……と。めっちゃ落ち込んで、初めて家族と彼氏の前で泣きました。
といっても全部抜けるわけじゃなくて、ふわふわした毛は残るんです。それならいっそ坊主にするかと思って、彼氏に髪を切ってもらったら「意外と頭の形、きれいじゃない!?」って褒められて(笑)。自分でも“結構似合うじゃん!”って、ちょっとうれしかった。家族も同情するどころか、みんな私の坊主頭にめちゃくちゃ笑ってくれて、そこで何かが吹っ切れましたね。
“髪がなくなるってどういうことだろう”ってそこが一番怖かったので、いざそうなったら、もう恐れることがなくなったんです。裸をさらしてるようなものだから、“何でもありじゃん、これ以上何も怖くないわ!”ってマインドになりました。
気持ちが大きく吹っ切れたあとはどんな生活に?
何かやっていないと1人で考え込んじゃうので、とにかく忙しくしていましたね。介護士の国家資格の勉強をしたり、美容の本を読んだり。病院での楽しみは、夜の肌ケア。入院中は肌質も変わり、毛穴が目立たなくなって、お肌がつやつやになったんですよ。これは落ち込んでる場合じゃないぞ、今がチャンス!と思って、スキンケア用品もよいものを買い集めました。
もともとファッションやメイクが好きだから、ここで妥協したら駄目だなって。前向きに脱毛症と向き合っている方のSNSを見つけ、“ウィッグでいろんなことができるじゃん!”と、ショートやロングなどウィッグを何種類も買いました。キャップと合わせたり、美容師さんに私に合うようカットしてもらったり。まつげも抜けたんですが、逆につけまつげののりが付きやすいので(笑)、メイクも楽しみながらやっていましたね。
あとは韓国アイドルが好きなので、“治療が終わったら絶対にライブに行くぞ!”と思って、ライブのチケットを予約したり、CDをたくさん買って、推しまくってました。
入院中はSNSの発信も始めたとか?
最初は、彼氏に勧められたんです。自分1人だとどん底まで行っちゃうから、自分の気持ちを吐露したり、誰かと気軽につながれる場所があるといいなと思っていたら、「SNSで病気のこと発信してみたら?」って。試しに病院でしたことや食べたものをアップしてみると、卵巣がんの人や、子宮がんの人がコメントをくれて。自分以外にも同じ悩みを抱えている人がいると知ってすごく励みになりましたね。
あと、SNSで私が病気だということを知った友達の反応も“意外”で、「そんなことがあったんだ」と、ふつうに明るくリアクションしてくれたんですよ。だから私も変に悲しくならずにいられました。病気になることは、悪いことじゃないし、かわいそうなわけでもない。だから逆にオープンに話していこうと思いましたね。
くじけそうになったときは、どうご自身と向き合っていましたか?
自分で自分をとにかく褒めていましたね。“これができる自分ってすごくない?”“みんなが経験しないことをしてるってすごいことだよ!”“いろんなことに感謝できるようになって、心も成長したね”って。
自分にポジティブな言葉をかけていれば、勝手に気持ちはポジティブになっていくと思って。家族や彼氏も「あなたは本当にすごい」とか「あなただから乗り越えられたんだよ」って、前向きな言葉をかけ続けてくれていたので、それも大きなパワーになりましたね。
病気を乗り越え、“大人”になれた現在
生きることが怖くなくなった
抗がん剤治療が終わったあと、すぐに仕事にも復帰されたそうですね。ご自身の中で、変化したことはありますか?
いろんな意味で強くなったと思います。先のことを冷静に見るようになったし、深いところまで落ち込まないように自分をコントロールできるようになりましたね。周りも、相変わらず「あなたは強い」と言ってくれるから、強くいられるところもあります。
考え方や感じ方も変わりましたね。例えば仕事場でイライラさせられる人がいたとしても、“きっとその人も、誰かにとって大切な存在なんだろうな”と、自然と思えるようになって。以前より優しい気持ちを持てるようになったし、大人になれた気がします。
あと、家にいられる時間がすごく幸せだと感じられるようになりました。親にも感謝しなきゃなと思うし、成長して心が穏やかになったのかな。
大きな変化を実感されているんですね。今、気持ちが揺れ動くことはあるんですか?
今後どうなるか、やっぱり分からない部分はあるので、再発したらどうしようという不安や、子どもができにくくなっているかなという心配はあります。病気を経験して強くなったと思うけど、小さな不安は今もずっとあって。でも、彼氏は「やってみなきゃ分かんないでしょ。そこに不安を抱える必要ないよ。大丈夫っしょ」と、相変わらず明るく言ってきますね。だから私も、ここで立ち止まって考え込んだら、“今”を楽しめないぞって切り替えるようにしています。
逆にいつ何が起きても、自分は楽しかったなって思いたい。なので退院後は、姉妹で韓国に行ったり、友達とは九州旅行へ行ったり、アクティブに過ごしています。病気になる前は1人で外食することもなかったんですけど、今は食べたいものは食べられるときに食べよう!と、1人で焼肉にも行っちゃうんですよ。
“ひとり焼肉”デビューも!これからしたいことや、行きたい場所はありますか?
海外だと、アジア圏を巡ってみたいですね。国内もまだ行ったことがない場所があるので、旅行をたくさんしたい。知らない土地に行って刺激を受けるとますます元気になるので、今はとにかく、行動しないともったいない!というマインドです。直近だと、推しのK-POPグループのコンサートに行く予定です。推しも、推せるときに推しとかないとって。
今も小さな不安はありますが、病気を経て、生きていくことへの怖さがなくなったような気がします。“いつ何があっても、もう怖くない”という気持ちの方が、今は大きいです。