大学生活×夢の追求のモヤモヤ! 幼少期からの“好きなこと”を貫いて進む、気象予報士への道
小さい頃から空を見るのが好きで、気象現象に興味を持つようになったTさん。そして昨年、大学院在学中に合格率5%前後といわれる気象予報士試験に合格し、2026年4月から念願の気象予報士として働く予定です。ストイックな同期の姿にプレッシャーを感じながらも、自分の夢に真っすぐ。しかし、“好き”を仕事にするためには、厳しい現実に向き合うことも必要でした。
PROFILE
T.Hさん
23歳
千葉県出身。高校を卒業後に茨城県の大学へ進学し、理学部に在籍。その後、大学院の理工学研究科理学専攻(地球環境科学コース)に進む。勉学に励む一方で、学内のストリートダンスサークルに所属し、イベントなどにも積極的に参加した。2025年10月、修士1年生のときに気象予報士試験に合格。現在、修士2年生。2026年3月に卒業し、4月からは気象予報士として、民間の気象予報団体への就職が決まっている。

空を見るのが好きな少年が成長し
気象予報士の資格取得を目指す
Tさんは現在、大学院で地球環境を学んでいますね。もともと、そのジャンルに興味があったのでしょうか。
小学生のときから、気象や宇宙、化石とかが好きで、テレビで関連番組をやっていたら、食い入るように見ていましたね。中でも惹かれていたのが、気象。“雷かっこいいな”“積乱雲ってきれいだな”と思ったり、雷が鳴っていると外に出て観測してみたいと思ったりするような子どもだったんです(笑)。雪があまり積もらない千葉に住んでいたので、雪が降ったら“珍しい現象だ!”と大喜びしていました。その頃から今も変わらず、よく空を見ながら過ごしています。
興味から気象を学び始めたとしても、国家資格に挑戦するのは大きなステップですよね。気象予報士を目指そうと思ったのは、どんなきっかけがあったんですか。
気象予報士に興味を持ち始めたのは、大学3年生の頃です。最初から“気象予報士になりたい!”と決意していたわけではなくて、“資格を持っていたら役に立つかも。試験を受けてみようかな”くらいの気持ちでした。社会人になると時間が取りづらくなるだろうし、学生のうちにチャレンジできることはやっておきたいという気持ちもあったので。でも、勉強を進めるうちに、僕が高校生のときに地元の千葉で起きた台風被害や、旅行で訪れた場所で発生した土砂災害など、身近な場所で起きた気象災害について改めて深く考えるようになって。だんだんと“災害で悲しむ人を減らしたい”“人々の暮らしの役に立ちたい”という思いが芽生え、気象予報士を目指したいと思うようになりました。ただ、“本気でやり抜こう”と思えるようになったのには、もうひとつ大きなきっかけがありました。
それは、なんでしょうか?
所属しているストリートダンスサークルでの経験です。もともとダンスには興味がなかったのですが、新入生のときに勧誘されて練習会に参加した際、キラキラとした先輩たちの姿に憧れを持ったのと、人前に立つのが苦手な自分を変えたいという思いもあり、初心者ながらサークルに入りました。僕の同期は、みんな大学からダンスを始めた初心者ばかりでしたが、本気で練習に打ち込む人が多くて。学年が上がるにつれて、周りとの熱量や実力の差を少しずつ感じるようになりました。もちろん自分なりに頑張っていましたが、なにしろ自分にはセンスがなくて……。最初は同じスタートラインに立っていた同期が、努力を重ねて上達していく様子を間近で見ていただけに、“今からみんなに追いつくのは難しいかもしれない”という気持ちが出てきました。“じゃあ、自分の本気になれることって何だろう?”と。それなら自分が以前から気になっていた、気象予報士になるための勉強を頑張ってみようと思ったんです。
同じ目標を抱く仲間とともに
時に助け合いながら掴んだ合格
大学の勉強とサークル活動と並行して、気象予報士試験の勉強をするのは大変だったと思います。どうやって時間をつくっていたのでしょうか。
週3で居酒屋のアルバイトもしていたので、本当に大変でした。時間がなかったので、よくないと分かっていながら、睡眠時間を削っていましたね。ダンスサークルの練習が夜9時頃に終わってから研究室に戻り、日付が変わるくらいまで試験勉強をしていたこともありました。家だとついダラけてしまうので、研究室で勉強するのが基本で。そんな生活を、試験に受かるまでの約2年間続けていました。
しっかり勉強されていたんですね。気象予報士の国家試験は、どのようなスケジュールで開催されるのでしょうか。
試験は年に2回実施され、学科2科目と実技1科目があります。1回で学科と実技をまとめて受験することもできますが、学科に合格するとその科目は1年間免除されるので、段階を分けて受験することもできるんです。僕はその制度を利用して、1回目に学科2科目に合格し、2回目で実技試験に合格しました。
2段階にした理由は、やっぱり受験勉強の時間が取れなかったからですね。1科目に合格したらサークル活動に戻り、そっちが落ち着くと、また次の試験対策に戻ってというのを繰り返していました。“今この時間が空いてるから、こっちをやっちゃおう”みたいな。やっぱり、学生のうちに合格したかったんですよね。もしダメだったら、社会人になっても受験を続けようという気持ちはあったのですが。
気象予報士の資格を取得するだけでなく、気象に関わる仕事に就きたい気持ちが固まったのは、いつでしたか。
大学4年間で気象の魅力にどんどんのめり込み、大学院進学と同時に、意思を固めました。気象関係の仕事をしたいから大学院に行ったという感じですね。大学の講義の中で、やっぱり気象の授業が一番面白くて。校外で観測をする授業もありましたが、そこで自分が持っている知識と同じような現象が観測されることが、すごく興味深かったんです。
気象を扱う学部だと、Tさんの他にも気象予報士を目指している仲間がいたのでは?
大学院の研究室には19人の生徒がいるのですが、そのほとんどが気象予報士を目指して勉強していましたね。中には僕より先に資格を持っている人も4、5人くらいいて、自分より先に後輩が合格することもあるし、“負けてられないな!”と感じていました。研究室に戻ると、同じように気象予報士の勉強をしている仲間がいて、情報交換をしたり、問題を出し合ったり。みんなで一緒に頑張れる環境だったことは、自分にとって大きな励みだったと思います。
Tさんの気象に対する思いについて、子どもの頃から変わったことを聞かせてください。
空に対する“意識”の持ち方でしょうか。子どものときは “かっこいいな”、“きれいだな”という気持ちでしかなかったんですけど。今は、“自分の知識や経験を用いて、災害で苦しむ人を減らしたい”、“人々の暮らしをよりよくしたい”という思いが強くなっています。
これまで勉強してきた気象の知識を使って
いろいろな人の役に立ちたい
気象予報士として、民間の気象予報団体に内定が決まりましたね。就職活動はどのように進めたのでしょうか?また、専門職としてキャリアを進めることについては、どのように考えていましたか?
第一希望は気象に関わる企業でしたが、幅を広げてIT系や金融系も含めて計15社に応募しました。エントリーシートの段階で落とされて心が折れそうになることもありましたが、“自分を落とすなんてセンスがないなぁ”というメンタルで就活していました(笑)。結果、就活ラストスパートの5月に、気象データを活用したサービスを展開する専門機関に内定を頂きました。希望していたところだったのでうれしかったです。
専門職に対する迷いはほとんどありませんでしたね。なぜなら、気象って人々の行動にとても深く関わっているんですよ。例えば、「今年の夏は暑いからアイスをいっぱい補充しましょう」というような形で、企業への販売戦略のアドバイスができるなど、役に立てる場面がとても多いんです。気象の知識を使っていろんな提案ができるのが、この専門職の魅力。自分のやりがいとも言えるポイントです。
好きな道を真っすぐ、ですね。4月から社会人になって、生活がガラッと変わると思います。今の率直な心境を聞かせてください。
そこは不安でしかないです(笑)。同期の多くは 偏差値の高い大学出身なので、一緒に渡り合っていけるかな……と。わくわくする気持ちはありますが、今は不安の方がちょっと強いです。
ただそんな中でも、気象予報士の資格を持っているという点は、仕事面において多少心強い部分があるなと思いますし、ダンス経験を通して身につけた、人前に堂々と立つ力も生かしていきたいですね。あと、自分は縁の下の力持ちタイプなので、チームをサポートする役割でも貢献できるんじゃないかなと思っています。
“好き”を仕事にするために、Tさんが必要だと思うことや、やっておいた方がいいと思うことがあったら教えてください。
好きな仕事でも、つらいことや大変なこともあるという現実を知ることかなと思います。内定先のインターンシップに参加した際、「予報が外れたときには、お叱りやクレームのコメントを頂くこともある」という話を聞いて、好きだけじゃ仕事はできないんだなと思いました。そういう“好きの裏側にある一面”も理解しておくことが大切なのかなと思っています。
こういう社会人になりたい、という理想像はありますか。
まさに内定先のインターンシップで実際に働く先輩の姿を見て、“こういう人になりたい”と思いました。気象のことに詳しくない人には丁寧な説明をして知識をフォローしたり、気象予報の精度を高めていくために自主的に勉強会を開いたりしていたんです。僕の夢は、専門的な知識を生かして、人々の暮らしを豊かにする気象予報士になることです。だからこそ僕自身も、先輩のようにいろいろな人と関わりながら成長を続け、“人の役に立つ気象予報士”を目指したいです。