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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 24

働く拠点×フリーランスのモヤモヤ! 自分の感覚を大事につくり上げた、“ワーケーション”という働き方

フリーランスの編集・ライターのSさんは、真面目で頑張り過ぎてしまう性格から多忙を極め、なかなか休めない日々が続いていました。そんなときにラグジュアリーホテルで労働環境を変えることを体験。そこから旅と仕事を併せた“ワーケーション”という働き方を見つけました。“自分の居場所”を変えることでSさんに起こった、たくさんの変容とは?

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PROFILE

S.Aさん

40歳

東京都出身。大学時代の就職活動で大手出版社を受けるも採用に至らず、総合人材サービス会社に就職。しかし媒体制作への思いを諦められず、Webメディアを運営する会社に転職し、コンテンツ制作の仕事に携わる。その後、アパレル会社のメディア部署へ転職して経験を積み、30歳で独立。現在は、1年の半分をワーケーションにあてながら、フリーランスの編集・ライターとして、紙媒体やWebなどのコンテンツ制作を行っている。

同じ場所にずっと座っていられない 
自由な働き方を求めてフリーランスに

Sさんは、もともと文章を書くことや、読みもののコンテンツを制作する仕事に興味があったのでしょうか?

小さい頃から、親が本をたくさん与えてくれた影響で、自然と文章を書くのが好きになりました。大学生のときはすでに紙媒体の制作に興味があったので、学生団体に入り、フリーペーパーなどを作っていました。その延長で就職活動でも志望先を大手出版社に絞ったら、全滅してしまって。結局、総合人材サービス会社の営業職に就いて働きましたが、“やっぱりやりたい仕事とは違う……”となりましたね。どうしても紙媒体制作への憧れを捨てきれず、25歳のときに退社しました。

他の仕事を経験したことで、制作に対する思いがより強くなったのですね。そこから、編集・ライターの職に就くまでの経緯を教えてください。

いろいろ探して、女性向け情報サイトを運営する会社にアルバイトとして入りました。Webメディアでしたが、紙媒体出身の人たちが立ち上げた会社だったので、ここなら学びがあると思ったんです。途中から社員になり、2年間くらい、編集とライター業務をしていたところで、「アパレル会社がメディアの部署を立ち上げるから、やってみない?」と声をかけてもらい、転職しました。そこで約3年働いたところで、私のいたメディア部署が分社化し、業務委託に移行していったんです。ちょうど会社と距離を置きたいと考えていたタイミングだったので、フリーランスに転身しました。30歳のときです。一応“独立”とは言っていますが、独立しようと思ってしたわけではなく、社外の仕事を取れるようになって、だんだんと会社と距離を置いた結果、フリーランスになったという流れです。

なぜ、会社と距離を置いてフリーランスという働き方を選んだのでしょうか。

毎日会社に行って机に座っていなきゃいけないルールが私には合わなかったんですね。同じ場所にいるのがつらく、自由に動きまわりたかったんです。たぶん精神的な束縛が嫌だったんだと思います。当時はリモート勤務もなく、部署の部屋も狭くて席の間隔も近い。そうなると、隣の人が何か食べてるのも気になっちゃうんですよ。たぶん私、神経質なんですよね(笑)。同じ場所にじっとしていられないのは、子どもの頃からの性質だと思います。

“ゆるいのもいいじゃん” 
価値観が変容した1ヵ月間の宮古島滞在

フリーランスになって、都心のラグジュアリーホテルに泊まりながら仕事をするようになったんですよね。何かきっかけがあったのでしょうか?

ラグジュアリーホテルをよく利用している知り合いから、「気分転換に行ってみたら?」と言われたことがきっかけでした。当時は締め切りを抱え過ぎていて休みが取れず、3日間で3時間しか寝られないような状態で。“ホテルで仕事をすれば、リフレッシュも同時にできる!”と考え、思い切って1泊したんです。それがすごくよかったんですよね。頑張った自分へのご褒美にもなるし、“また泊まれるように仕事を頑張ろう”と次のモチベーションにもつながった。それ以来、2、3ヵ月に1回のペースで習慣化するようになりました。

といっても気軽に泊まれる金額ではないので、1泊だけと決めて、利用は年に3、4回。1泊の料金がだいたい3、4万円で、年間10万前後のコストです。旅行にも全然行けていなかったので、そのくらいならなんとか捻出できる金額でした。最初は都内だけでしたが、横浜まで範囲を広げて約10年間、ラグジュアリーホテルに泊まって仕事をする習慣を続けていましたね。

では、仕事をしながら関東圏でホテルステイする生活から、本格的に遠方でのワーケーションに移行した流れを聞かせてください。

2019年に、知人からの「友人夫婦が宮古島でガラス工房を立ち上げるから、交代で1ヵ月ずつ手伝いに行かない?」という誘いに、“楽しそう!”と乗っかったんです。現地では、島の人たちと一緒に大工仕事や店番をしたりしながら、編集・ライターの仕事をしていました。

その宮古島で受けた刺激がすごくよかったんですよ。私はもともと旅行に積極的に行くタイプではなく、当時は自然の素晴らしさにもあまり気付けていなくて。ある日、ガラス工房のご夫婦が、「夕日を見に行こう」と誘ってくれたのですが、私は、「えー!夕日を見に行くためだけに車を出すんですか!?」と驚きました(笑)。それまでが忙し過ぎて、そういう感覚すら失っていたんでしょうね。

Sさんにとって、いろいろな意味でワーケーションが作用したんですね。

そうなんです。そのご夫婦をはじめ、島の人たちもみんな面白くて、刺激的な出会いがたくさんありました。“こうでなければいけない!”というガチガチな思考の私からすると、“こんなゆるくていいの?”と感じることばかり(笑)。それまでの私は、“ゆるい=悪い”と思い込んでいたのですが、“ゆるいのもいいじゃん”と思えるようになりました。そうやって、自分の中で変化がいっぱい起こっていくことが楽しかったですね。

宮古島での経験をきっかけに、別の場所でも価値観を広げようと思っていたときにコロナ禍となり、現場仕事が減ってリモート業務が普及し出したんです。そのタイミングで本格的にワーケーションを始めました。フィリピンに3週間の短期留学をしたり、高校の同級生がやっている館山のゲストハウスを間借りしたり、自然の中に身を置きながら仕事をする楽しさを知りましたね。“風ってこんなに気持ちいいんだな”とか、感じられるようになったんですよ。

“属していない不安”があるからこそ 
“個体”になるために旅をする

現在は、どんなペースでワーケーションを行っているのでしょうか。

1年間の約半分を東京以外の場所で過ごしています。少し前までは、旅に出るのは1ヵ月間と決めていたのですが、長いと感じるようになり、今は長期でも2週間を目安にしています。都内の仕事をまとめて入れて、“ここで行く”というタイミングを自分でつくって、旅に出ています。滞在先は、縁があったところです。たまたま出会った人が住んでいる地域に行ったり、その人が帰省する際について行ったり(笑)。観光にはあまり興味がなくて、好奇心の赴くままに、ですね。

最近は自分の回復を求めて自然のある場所を選んでいて、元気になって帰ってきます。私、真面目で考え過ぎちゃうんですよ。視野がキューッと狭くなってしまうのを、空間を変えることでリセットしたり、仕事と関係ない人と話すことによって、“あ、私、根を詰め過ぎているな”と気付くことができるんです。

今のペースで、仕事と旅行と自分の趣味が、いい感じにまわっているなと思います。10年かけて、ようやく自分の求めているものが形になってきた。そんな感覚があります。だから今は、上り続けていた階段の踊り場にいるような、落ち着いた状態かもしれません。

1年前からシェアハウスに住んでいるのは、身軽にワーケーションに出るためなのでしょうか。

以前はひとり暮らしをしていましたが、ほとんど家にいないので、家賃がもったいないなと思うようになりまして。また、家を空ける時間が長いと水回りが乾燥して、虫が入ってきやすいらしいんですよね。他にも防犯、管理のしやすさの観点からシェアハウスに引っ越しました。 

1年のうち半分の期間、旅に出るのは、金銭面のやり繰りが必要なのかなと思います。何か工夫されていることがあったら教えてください。

いろいろ工夫しています。例えば、支払いを1つのカードに集約して、マイルをためて飛行機代に交換していますし、コツコツとアプリのポイ活もしています。宿に関しては、サブスクで民泊できるチケット制のサービスがあり、1泊4000円程度で泊まれるんです。それから、飛行機も安い時期を狙ってチケットを取るようにしていますし、海外でも東南アジアなら滞在費用は欧米ほどかかりません。工夫次第でなんとかなるかなと思いますね。

いろいろな節約術がありますね。Sさんがフリーランスとして働く中で、“属さない不安”を感じることはありますか?

それはもう、ずっと不安ですよ。でも、1人でいろんな場所へ行くようになって、自立心が芽生えてきました。特に大きかったのは海外での滞在経験です。海外にいると、全部自分でやって、全部自分に返ってくるじゃないですか、それを繰り返すうちに、“属さない不安がなくなっているな”と気付いたんです。私にとっては、“個体”になるために旅があったんだと思います。私のように真面目で考え過ぎる人にこそ、ワーケーションはおすすめですね。

現在40歳で、「階段の踊り場」とおっしゃっていました。次の“50歳の踊り場”に向けて、考えていることがあったら聞かせてください。

ちょうど今、“どうしようかな”と考えているところです。全部を一度リセットすることも視野に入れています。ワーケーションでもなく、編集・ライターの仕事も辞めて、世界一周……はお金がかかるので、ヨーロッパを一周するとか。今は、そんなイメージを漠然と描いているところです。

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