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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 31

開業の夢×生計のモヤモヤ! 新天地でスパイスフード店を開きたい!夢を追い続ける葛藤と決断

約10年間、飲食店勤務の経歴を持つTさん。33歳でスパイスカレーの魅力にハマり、スパイスフードの探求を続けるうちに、いつしか自分の店を持つことが目標に。来年の早春には福岡へ移り、心機一転、夢と生計とを両立する道を模索します。40歳で道半ば、それでもしっかりと前を向くTさんに、“やりたいこと”と“稼ぐこと”の折り合いの付け方について聞きました。

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PROFILE

T.Kさん

40歳

兵庫県出身。大学卒業後、コーヒーチェーンの会社に就職。7年間で4店舗の店長を務める。退社後、神奈川のコーヒー店で勤務しているときに、スパイスカレーと出合い、スパイスと薬膳の勉強をスタート。作ったカレーが評判を呼び、出店の声が掛かるように。契約社員やアルバイトの仕事をしながら、“流しのスパイスフード屋”として東京や神奈川の飲食店やイベントで不定期出店を行っている。2026年2月に福岡へ移住予定。

薬膳とスパイスフードの面白さにハマり 
深めていった先に出店の声掛けが

まずは、スパイスフードに興味を持ったきっかけから教えてください。

最初は“薬膳”がきっかけですね。もともと食べることがすごく好きなのですが、“せっかく食べるなら、体によいものを取る方がいいな”と思っていた頃に、薬膳カレーの存在を知ったんです。“カレー”という枠組みがある中で、薬膳とスパイスと食材を組み合わせてレシピを生み出していく、その工程が楽しくて。そこから自分でいろいろ作るようになって、通信制の「カレーの学校」にも行きました。スパイスは生薬としても使われると知って、ますます“スパイスって面白いな!”と思いました。以前から抱いていた、“体によいものを作りたい”という思いに、スパイスカレーというピースがうまくはまった感じです。

ご自身で作って楽しんでいたスパイスカレーを提供するようになった経緯は?

スパイスカレーを作ると一度に4、5人分できてしまって、だいたい余るんですよ。それでよく、働いていたコーヒー店に持って行って、そこのスタッフに食べてもらっていました。その頃はスパイスカレー店をやろうなんて思ってもいなかったんですけど、近所でバーを営んでいる常連のお客さまが噂を聞いて、「うちでカレーを出してみたら」と声をかけてくださったんです。せっかくだからやってみようと思って、そこで初めて、自分で作ったスパイスカレーに対してお代をいただきました。2020年、35歳のときですね。その頃には勤めていたコーヒー店をすでに辞めていて、自然食品を扱う酒屋でアルバイトをしていました。そのあと、飲食業の友人から「シェアカフェで週に1回、一緒にやろうよ」と声を掛けてもらって、スパイスカレーを出したのが活動の始まりです。そこから定期的にいろんなところでポップアップ出店をするようになりました。アルバイトや派遣社員として働きつつやっていたので、なんとか続けることができました。

正社員ではなく、あえてその選択肢を選んだのは、スパイスカレーの活動と、生活していくための仕事を切り分けて考えていたからでしょうか。

長く勤める気持ちがそもそもないから、正社員でいるメリットというか、魅力をあまり感じなくて。“ボーナスをもらえていいな”と羨ましく思うくらいですね。好きなことと仕事を分けて考えていたんですけど、やっていくうちに、“自分のお店を持ってスパイスカレーをやりたい!”と思う時期と、生活の不安を感じて、“ちゃんと定職に就いて収入を安定させたい”と思う時期の波がずっとあって……。それを繰り返しているうちに、“働きながら好きなことをやる方が、精神的に落ち着くな”とだんだんわかってきたんです。正社員としてどこかでしっかり働くこともできなくはないと思うんですけど、それを自分が生き生きとやっているイメージがつかないんですよね。ただ、今みたいな“流し(特定の場所に所属せず、必要に応じて働くこと)”のスタイルで飲食の活動をするのは、体力的にとてもしんどくて。自分のお店を持ちたい気持ちはありますが、スパイスカレー1本で生計を立てるつもりは今のところないんです。

自分の働き方の“パターン”がわかったことで 
上手にバランスをとれるようになった

いろいろな働き方を経験したことで、自分が生き生きと働けるスタイルが見つかった、ということでしょうか。

これまで、「一生懸命やりすぎて、疲れちゃって、リセットするために辞める」ということが続く中で、自分がダメになるパターンのようなものが、ようやくわかったんです。自分で自分に勝手に負荷をかけて、周りと比べて“なんで私1人がこんなにやっているんだろう……”と感じてしまう。ペース配分が上手にできないんですよね。“次こそは!”と思って新しい職場に行っても、結局疲弊して、同じようなことで嫌になって辞めちゃう。不満でいっぱいになる自分のこともすごく嫌でした。だから、ずっと勤めることが前提じゃない職場が合っていて、スパイスカレー活動とのバランスが取りやすいんだと思います。

その両立の中で、モヤモヤすることや心配になることはありますか?

ごくたまにですけど、「趣味でやられているんですね」と言われることがあるんです。まぁ、そう思われても仕方ないんですが、ちょっと傷つきます。やっぱり飲食業1本で生活するのは本当に大変なことだと思うから、よいところだけをちょっとやらせてもらっている感覚は自分自身の中にもずっとあって。“よく思われていないんじゃないかな”とか、周りの飲食店の人たちに“本気でやってないじゃん”と思われているかなとか、そういうところでちょっとモヤっとすることはあります。全然気にならない方もいるでしょうが、私は気になっちゃうんですよね。「趣味なんですね」って言われたら、「えへへ」って言いながら、心の中では“やるとやらないは違うもん!”と思って、気持ちを落ち着かせています。飲食店の方に対しては、常にリスペクト。“すごいことをやっていますよね”という気持ちを忘れないようにしています。

“流しのスパイスフード屋”としてのやりがいと大変なところ、それぞれ聞かせてください。

スパイスフードに限らないですけど、やっぱり「すごくおいしかった!」と喜んでもらえたときはうれしいですね。あと、食べた方から「このスパイスは何?」とか、「どんな効用があるの?」と質問されたりして、“薬膳とスパイスに興味を持ってもらうきっかけになったかも”と思えるとき。自分の仕事にやりがいを感じ、やっていてよかったなと思います。

大変なのは、お客さまにカレー好きな人がすごく多いこと!(笑)。「休日はカレー屋をたくさん回って、いろいろ食べています」と言われると、 “満足していただけるかな?”とヒヤヒヤしますね。作っていて理想の味にならないときもすごく焦ります。あとは、“移動”かな。材料を詰めた重いクーラーボックスを公共交通機関でガラガラと運ぶのですが、それが仕事の6割くらいかもしれません(笑)。出店先にスパイスの匂いや黄色いシミが残らないように、ということも気を遣っています。

“拠点=お店”をオープンすることを目標に 
動きたい気持ちに従って移動する

ご縁が広がり、ポップアップ出店の声がたくさん掛かっていると伺いました。そんな中、福岡へ移住されるとのこと。何がTさんの背中を押したのでしょうか。

ずっと拠点を作りたかったのと、何年か前からずっとあった“動きたい”という気持ちがどんどん大きくなってきちゃったんです。神奈川に来て10年の節目ということが大きいかもしれません。行って後悔することもあるかもしれないですけど、動いてみて、できるかできないかをチャレンジしてみたくなったのかな。ちょうど、近所に住む友人が実家のある福岡に帰ることになったので、私も一緒に移動することに。こちらでも九州出身の人たちに出会うことが多く、ずっと興味があったエリアなので、“行くきっかけを作れたな”という感じです。

あと、やっぱり毎回違う場所で出店することが自分にとって負担で……。拠点を持てば、準備や片付けに必要以上に気を遣うことがなくなるので、精神的に安定すると思うんですね。だから、“拠点となるお店を出す”という目標を持って、福岡へ行きます。でも“お店”といっても、毎日ではなく、週に何日か開けて、ほかの曜日は誰かに任せるスタイルが理想です。お店を持ってみて、“やっぱりスパイスカレー1本でいきたい”と思うかもしれないですけど、今は、ほかのライスワークと並行してやっていきたいですね。

40歳という年齢で新天地での生活をスタートすることに不安はありませんか?

もちろん、“福岡でちゃんとした仕事が見つからなかったらどうしよう”とか、“今周りにいる人たちとすごく仲がよくてよい環境だけど、福岡でも同じようなコミュニティが作れるかな”とか、不安はいっぱいあります。でも、このまま同じ場所にいたら後悔するということは、自分でも分かっていて。年齢を重ねれば重ねるほど、精神的にも体力的にも今よりもっとハードルが高くなる可能性はありますよね。それなら今、やった方がいい!と考えて、決断しました。

勇気がいる決断でしたね。Tさんが人生の選択をするとき、誰かに相談することはありますか?

私、本当に自分で納得しないと、すごく尊敬している人の話でも、すんなり聞けないんです。相談しておいて、いただいたアドバイスを生かさないのは失礼になると思うので、ピンポイントに「これに困っているのでどうしたらいいですか?」ということ以外はあまり相談しないかも。迷いや悩み事に関しては、人に相談するよりも、“自分がどうしたいか”と自分にとことん向き合って決めてきた気がします。方法としては、とにかく自問自答です(笑)。

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