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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 36

好きなこと×職業選択のモヤモヤ! 今の仕事は本当に向いてる?踏ん張った先に見えてきた世界

美術大学(以下、美大)などの専門機関に通わず、デザイン業界へ進んだTさん。転職を考えるほどのつらい“修行”の日々を経て、現在は一人前のデザイナーとして多忙な日々を過ごしています。2年目に直面した深い挫折や未経験ゆえの葛藤をいかに乗り越え、創作を軸にするに至ったのか。遠回りしたからこそ見えた仕事の誇りや人生の指針を伺いました。

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PROFILE

T.Yさん

27歳

東京都出身。幼少時から絵を描くことを趣味とし、大学在学中から個人でのイラストの商業活動を開始。大学4年生時のインターンでも、イラスト制作を経験。卒業後は業界未経験からデザイン制作会社に入社し、現在は4年目のデザイナーとして勤務している。入社当初は実力不足に悩み挫折を経験したが、コーチングを機に“納得がいくまでやり遂げる”と決意し克服。現在はクライアントの本質をくみ取る制作に注力している。

美大か外国語大学か 
立ちはだかった2つの選択肢

現在は新卒から勤める会社でデザイナーをされているそうですが、もともとはイラストレーターの道を模索されていたそうですね。昔から絵を描くのは好きだったのですか?

はい。幼稚園の頃からお絵描きが好きで、よく部屋で自由帳を広げ、お姫様の絵などを描いていた記憶があります。小学校、中学校、高校と進んでも相変わらず絵は好きで、自分から手を挙げて、学校で配布する冊子などに挿絵を描かせてもらっていましたね。そういった経験から、高校時代は美大への進学も、選択肢の一つに入れていました。

美大への進学も希望していたということですが、実際には外国語大学に進学されていますね。

幼少期から英会話教室に通っていたので、私にとっては“英語”も、絵と並ぶ大きなアイデンティティになっていました。国際学科という特殊な学科を持つ高校に進学したのも、英会話を通じて生まれた海外への憧れがきっかけです。美大に進むか、外国語大学に進むか。真剣に考えた結果、美大は学費の負担が大きく、4人きょうだいという家庭環境を踏まえると、親を説得するのは簡単ではないと思いました。加えて、絵が好きだったとはいえ、当時はそれを人生の軸に据えられるほどの自信がなくて……。むしろ自分の強みを生かせるのは、“語学”だと確信が深まっていき、最終的に外国語大学への進学を選びました。

冷静な判断で、外国語大学という選択をされたんですね。大学で語学を学びながらも、クリエイティブな仕事を志すようになったきっかけは何でしたか?

大学に入学してからも趣味として、引き続き絵は描き続け、作品をSNSに投稿していたのですが、思いの他たくさんの反響をいただけるようになって。なんとSNS経由でお仕事の依頼が来るようになったんです。3年生の終わり頃になると、語学への熱が冷め始め、むしろイラストを仕事にしたいという思いが大きくなっていきました。でも大学で学んだこととは大きく異なるイラストの道を進むのかどうか、迷っていて……。自分にはまだ将来について考える時間が必要だと感じ、1年間大学を休んで自分を見つめ直すことにしました。

業界未経験でも、“このまま終われない” 
思い切って選んだデザイナーへの挑戦

休学期間中はどのようなことをされていたんですか?

それまで以上に、創作活動に没頭していましたね。その結果、展示会のお誘いが来たり、大手企業の広告案件に携わることができたりと、充実した休学期間となりました。この経験で自信が育ち、自分の根底にある欲求というのが“創作すること”なんだなと改めて認識できたと思います。絵を仕事にしたいという気持ちが固まり、休学を終えたタイミングで、社内報制作をメインとする制作会社のインターンシップに応募。無事に採用していただき、社内イラストレーターとして冊子の中で使用されるイラストを制作することになりました。

フリーランスではなく、企業に所属することを選んだ理由はありますか?

確かに個人として仕事の依頼は頂いていましたが、自分のイラスト活動はあくまで趣味の延長だという意識がありました。正直なところ、フリーランスとして生きていける自信がなかったんです。だからこそ、“きちんと食べていける保証”を得るためにも、まずは就職しようかなと。また、依頼に合わせてさまざまなタッチで描くという仕事内容が、自分のイラストの幅を広げることにもなるだろうという期待もありましたね。

現在は主にデザイナーとしてキャリアを重ねていますね。現在のデザイン会社には、どのようにして出合ったのでしょうか。

さまざまなインターンシップに参加して企画や編集、デザインといった制作の一連の流れを現場で目にするうちに、イラストに限らず、ものづくり全体への興味が少しずつ広がっていって。中でも強く惹かれたのが“デザイン”だったんです。

大学のサークルで広報誌のデザインを担当した経験もあり、もともとデザインには関心がありました。でも、デザイナーは専門性の高い仕事というイメージがあり、美大できちんと学んでいるわけではない自分にはちょっと難しいだろうと、心のどこかで諦めていたんです。それでもインターンシップを経験する中で、“このままで終わりたくない”という思いが強くなっていき……、思い切ってデザイナーを目指すことを決めました。

インターンシップ終了後に、デザイン会社への就職活動をスタート。美大や専門学校出身ではない自分にとってハードルは高かったですが、幸いにも学歴や経験を問わない会社と出合い、デザイナーとしての第一歩を踏み出すことができました。

やらないより、“やって後悔”したい 
失敗をいとわない思いを原動力に

学校でデザインのことを学んでから入社する人が多い業界で、未経験からのキャリアスタート。苦労することが多かったのではないでしょうか。

そうですね。入社して最初の数年間は、自分のデザインに対してクライアントから大量の修正依頼がきました。何度直してもなかなかOKが出ないし、何が正解なのかも分からない。ずっと苦しかったです。1年目は“新人なんだから分からなくて当然。今は吸収の時期だ”と自分に言い聞かせて踏ん張れたのですが、2年目になっても状況は変わりませんでした。相変わらず修正の嵐で業務が深夜まで及ぶことも多く、3年目を迎える頃には心も体も限界に近づいていましたね。

“自分は本当にデザインが好きなんだろうか”“そもそも向いていないのかもしれない”。そんなふうに自問自答する日々が続き、他の業種への転職も考えるようになりました。

デザイナーとしてのキャリアを積み続けるか、別の道を進むか……判断をせまられる状況にどのように向き合われたのでしょうか。

まず、この状況を第三者に客観的に判断してもらいたいと思い、キャリアコーチングを受けにいきました。そこで頂いたアドバイスが、“他業界に転職するんだったら、このタイミングしかないよ”というものだったんです。

でも、いざ転職ということを現実的に考えたときに、今までの自分のたどってきた道というものをやっぱり思い返すんですよね。大学で学んできたことをある意味手放して、それでもこの道を選んだ。そのときの覚悟や熱い思いが、なぜ、今の自分にはないんだろうと。ここで辞めてしまったら、過去の自分を否定してしまうような気がしたし、何も残らないまま終わってしまうのは、それはそれで怖かった。せめて“やり切った”と自分が納得できるところまで進んでから辞めたい。コーチングを通してそう思い直し、なんとか転職を踏みとどまりました。

原点に立ち返ることが、再び前へ進むきっかけになったんですね。その後、仕事の仕方などはどのように改善されましたか?

クライアントからの修正は、言われた通りにそのまま受け取るのではなく、“なぜそうしたいのか”という意図や指示の本質的な部分をくみ取るようにしました。そのためにも、クライアントと丁寧に意思疎通を図り、認識合わせを徹底する。そうしたプロセスを積み重ねることで、仕事がスムーズに進むようになりましたね。ただ、こうした感覚はやはり経験でしか身につきません。試行錯誤や失敗を重ねた分だけ気づきがあり、辞めずに続けてきたからこそ得られたものだと強く感じています。

さまざまな経験を通して、自分が選択した道を後悔することはありますか?

その都度その都度、自分にとってベストな選択をしていると思っているから、特に後悔はありません。でも、実践を通じて成長してきた私にとって、やはり学校でアカデミックな教育を受けていないことが弱みになっていると感じる場面もあります。その部分に関しては、いつか何らかの形で補っていきたいと思っていますね。一方で、デザインの仕事を通じて“どんな経験も無駄にはならない”と感じるようにもなって。美大に通う方たちが専門的な学びを深めている時間に、私は外国語大学で言語を学び、異なる文化背景を持つ人たちと交流していた。その経験は決して遠回りではなく、どこかで自分の強みになっていると思いますね。

大学入学から現在に至るまで、人生において大きな選択をせまられる局面があったかと思います。Tさんはどのような感覚を大切にしてきましたか?

一つ大きな軸としてあるのは、“やらずに後悔するより、やって後悔したい”という考え方です。例えば職業を選ぶとき、“本当にデザイナーなんてできるのか”と迷っても、最終的に“やる”という選択に踏み切れたのは、“やらずに後悔”だけはしたくないから。そして、強い思いで決断したのなら、選んだ道を“後悔”することもきっとないはず。自分なら絶対にやり切れるし、私は大丈夫!そんなふうに思っています。

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