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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 38

起業失敗×キャリアチェンジのモヤモヤ! 志をもって始めた事業で挫折し、廃業を決断。それでも挑み続ける理由とは?

起業や転職など、キャリアの転換を重ねてきたTさん。経営者として思い通りにいかない現実に直面し、不安や迷いを抱えながら走り続けた日々もありました。遠回りに感じた選択や、立ち止まらざるを得なかった時間も含めて、その全ての経験が、今の価値観や生き方につながっていると話します。試行錯誤を重ねてきたからこそ見えてきた、自分なりの働き方や人生との向き合い方とは?

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PROFILE

T.Kさん

34歳

大学卒業後、人材系の会社に入社。医療系の人材サービスの立ち上げに携わる中で、業界に切実な課題を感じ、介護士と現場をつなげるスポットワークサービス事業を立ち上げる。しかし、軌道に乗らず廃業。その後、プログラミングスクールに通い、エンジニアとして就職。現在はその会社を退職し、AIを活用した新たな事業の立ち上げに再び挑戦中。

起業するも1年ほどで廃業に 
自身のスキル不足を痛感した、起業のリアル

これまで2度、自身の会社を立ち上げてビジネスに挑戦されていますが、起業を志すきっかけは何だったのでしょうか?

高校生の頃、あるNPO法人の創設者の方に出会い、その生き方に感銘を受けたことがきっかけです。社会課題に真正面から向き合いながら、それを事業として成立させている。その実行力に強い憧れを抱き、“将来的には自分も何かに挑戦してみたい、起業してみたい”という思いを持つようになりました。

高校生の頃から起業を意識していたんですね。その後、どのように進路選択をしたのでしょうか。

もともと海外志向が強かったので、留学制度の整った大学へ進学しました。在学中に海外留学を経験し、卒業後は、起業を視野に入れて、新規事業の立ち上げポジションを募集していた人材系の会社へ就職しました。起業という目標に向けて、実践的な経験を積める環境だと考えたんです。入社後は、医療系の人材サービスの立ち上げに携わり、営業からマネジメントまで幅広く経験することができました。

3年半ほど会社に在籍したのち、起業の道を選んだんですね。会社員として働く中で、起業する際の事業アイデアはどのように育まれていったのでしょうか。

医療系の人材派遣の仕事をしていた頃、介護施設の人手不足を間近で見てきました。そこで、介護士が1日単位で働けるアルバイト契約の仕組みがあれば、現場の負担を減らせるのではないかと考えるようになったんです。当時は、スポットワークという概念自体が登場したばかりで、まだほとんど浸透していない時代でした。その仕組みを介護に展開し、日本全国に広げることで、介護業界の人手不足を解消したい。そして、入居者の方々に十分なケアが行き届く世界を実現したい。かなり理想論ではありましたが、そんな思いから、2019年に介護士向けのスポットワークサービス事業を立ち上げました。

ずっと目標としていた起業を実現し、サービスの構築に取り組む中で、想定していなかったことや難しさはありましたか。

創業当初は、“この事業は成功する”と思っていました。今振り返っても、方向性自体は間違っていなかったと思います。ただ当時は「スポットワークなんて絶対に流行らない」と言われることが多く、投資家からもなかなか賛同を得られませんでした。毎日のように何十人もの大人から自分の考えを否定され続ける状況は、精神的にかなりきつかったですね。資金面でも想像以上に壁がありました。初期費用として数千万円規模の資金が必要で、それを支援してくれる出資者を探す必要があったんです。介護施設側に足を運び、サービスを知ってもらう活動を行うことで関係性を深め、手を挙げてくれるところを探していく予定でした。しかし、なかなか事業の将来性を理解してもらえず、資金調達は思うように進みませんでした。会社員だった頃に貯蓄していた自己資金もあったのですが、限られた資金でプロダクトの開発と事業運営を同時に進めるには限界がありました。

心機一転、エンジニアへキャリアを転換 
その経験から得た気付きと、価値観の変化

事業が軌道に乗らないことに対して、どのように向き合っていったのでしょうか。

次第に朝起きるのがつらくなり、メンタル的にもかなり落ち込んでいきました。このまま走り続けることに限界を感じていましたが、すぐに事業を諦める決断ができるわけでもありません。そこで一度立ち止まり、改めて自分のスキルを棚卸ししてみることにしたんです。すると、自分にはビジネスの構築や営業は得意な一方、アプリやシステムなどをつくるプロダクト開発力が不足していると感じるようになりました。

そうした中で、“もし、もう一度起業に挑戦するなら、自分で開発までできるようになりたい”という気持ちに。それまではずっと会社をたたむことに葛藤があったのですが、エンジニアの道に進むために、廃業して地元に戻ることを決断しました。プログラミングスクールに通うことを決めると、次に進む方向が見えたからか、一気に気持ちが楽になったんです。スクールには5ヵ月ほど通いました。自分を追い込む意味でスクールに行ったこともあり、勉強漬けの毎日でしたが、いつもわくわくしていましたね。スキルアップすればするほど、自分でできることが増えていくので、すごく楽しかったです。

プログラミングスクール卒業後はエンジニアとして会社員を経験されていますが、この経験は、ご自身のキャリアにとってどのような意味がありましたか。

開発を学び、エンジニアとしての実務につけたことで、 “外注に頼らず自分で開発できる”という大きな強みが持てました。自分でプロダクトをつくれるなら、ビジネスやサービスを立ち上げる際、外注にかかる数百万円、場合によっては数千万円単位のコストを削減できます。

また、仮に事業がうまくいかなかったとしても、エンジニアとして働く選択肢がある。そうした意味で、エンジニアというキャリアはリスクヘッジにもなりますし、もう一度大きく挑戦するための土台になったと感じています。

起業後の挫折、学び直し、新たな職、とキャリアチェンジを重ねる中で、人生観や価値観に変化はありましたか?

一言で言うと、人生が整いましたね。起業に集中していた時期は、仕事中心でずっと働きっぱなしでしたが、エンジニアとして会社員になり、フルフレックスで働くようになってからは生活に余白が生まれました。仕事以外の時間も大切にできるようになったのは、大きな変化だったと思います。

現在はその会社を辞めて2社目の会社を立ち上げ、新しいビジネスを準備している段階です。忙しくても意識的に時間をつくり、休むことを大切にしています。最初の起業のときは、休みゼロで週7日働くのが当たり前でした。でも、結果的にメンタルを崩してしまい……無理をし過ぎてはいけないんだなって、痛感しました。今は、本を読んだり、何もしない時間を過ごしたり、温泉やサウナに行ったりしながら、自分のコンディションを整えるようにしています。

再び起業にチャレンジ!
諦めずに進み続けられるマインドの源とは

現在は、2度目の起業に向けて準備されているとのこと。新たな挑戦について、教えてください。

これまでずっと人材系の仕事に携わってきましたが、自分で立ち上げた事業が伸びなかったときに、“この先も人生をかけてこの分野に携わり続けたいのか?”と自問自答してみたんです。そこで思い出したのが、自分自身が人生の選択に悩んだ際にずっと欲しかった、“相談相手”の存在でした。これまで何度かキャリアの転換を経てきたけれど、立場や利害関係にとらわれずにいつでも頼れる経験豊富な相談相手がいたら、人生はもっとよくなるんじゃないか……。

そんな発想で開発したのが、ウェルビーイングやメンタルヘルスを支える「AIコンパニオン」です。対話しながら個人の成長やキャリア、人生に伴走してくれる、パーソナルメンターのような存在を提供したいと考えました。自分がキャリアの転換の中で何度も悩み、立ち止まってきたからこそ、出てきた発想だと思います。現在はリリース準備中で、ようやく世に出せるところまで来ました。ここまで来られたことにほっとしている一方で、不安がなくなったわけではありません。それでも今は、その不安ごと抱えながら前に進もうと思っています。

挫折や不安も経験する中で、それでもなお、挑戦を続けようと思える背景には、どんな思いがあるのでしょうか。

確かにうまくいかないことも多いですが、チャレンジできること自体が、とてもありがたいことだと感じていて。実は、僕が1社目を興したのと同じタイミングで起業した親友が、ある日突然、心不全で亡くなってしまったんです。そのときに、“挑戦できる体や環境があることは、決して当たり前ではないのだ”と強く実感しました。

もちろん落ち込んだり、立ち止まったりすることはあります。それでも、チャレンジすること自体を諦めようと考えたことはありません。友人の分まで、やれることをやり切りたい。そんな思いが、自分を前に進ませているのだと思います。

これまでの経験を通して、行動する際に大切にしていることを教えてください。

失敗するかもしれませんが、やっぱり、とりあえずやってみることが大事だと思っています。僕のところにも「起業したいんです」と相談に来る人は多いのですが、実際に行動に移す人はそれほど多くありません。情報が足りないまま、大変そうというイメージだけが先行してしまって、最初の一歩が踏み出せなくなっている人が多い印象です。

僕自身、最初の起業ではうまくいかず、“もっとできたんじゃないか”と後悔したこともありました。でも、その経験があったからこそエンジニアの道に進み、“自分でプログラミングできる”という強みを手に入れられました。アップダウンも多く、遠回りだったと感じることもありますが、あのとき諦めなかったからこそ、今こうして新しいサービスを開発するところまで来られたと思います。うまくいくかどうかは、やってみないと分かりません。でも、失敗したとしても取り返しはつきます。だからこそ、失敗を恐れ過ぎず、まずは一歩踏み出してみてほしいと思います。

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