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みんなの人生ピカっとのぞき見! Vol. 15

夫婦生活×養子縁組のモヤモヤ! “自分の子、他人の子”に垣根はない。縁がつなぐ新しい家族のかたち

38歳で結婚後、不妊治療にチャレンジするも子どもに恵まれず、養子縁組というかたちを選んだIさん。2025年3月に生後10ヵ月の男の子を迎え入れ、家族3人での新しい生活をスタートさせました。血のつながらない子を迎えることに大きな迷いはなかったと話すIさん。決断の基盤にあるのは、“子どもを育てられる環境があるなら生かしたい”という思いでした。

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PROFILE

I.Sさん

48歳

長崎県出身。北九州の大学を卒業後、音楽の専門学校へ進学のため上京。録音スタジオ勤務を経て、SEに転職し、東京と福岡で約10年間働く。その後、化粧品通販のマーケティング分析の仕事に携わっていた際、フランス在住でヨーロッパ生地の販売を行う友人から仕事を頼まれ、約1年間フランスで暮らす。帰国後の2015年に結婚し、2018年には都内でヨーロッパ生地の店をオープン。不妊治療の末、養子縁組を決断。2025年3月に生後10ヵ月の男児を迎え入れた。

38歳で結婚し、不妊治療を経験 
“今ある環境を子どものために使いたい”と選んだ養子縁組

まずは、Iさんが養子縁組の選択肢を考えるようになったきっかけを教えてください。

年齢のことが大きいですね。私は38歳で結婚したのですが、私も夫も子どもが好きだったので、結婚したらすぐに不妊治療を始めるつもりでいました。同時に、“もし妊娠できなかったら、養子という選択肢もありだな”という気持ちもあって、夫にもそれを伝えていました。

夫は私より3歳年下で、結婚するときに「子どもは2人欲しい」「妊活していれば、いつかは妊娠できるんじゃない?」と言っていました。妊娠や出産についてあまり現実的に考えてはいなかったと思います。でも、仲のいい友人夫婦から不妊治療をしている話を聞いて、“自分たちも考えなきゃいけないのかも……”と思い直したようで。そこから、不妊治療と養子縁組に対して積極的に取り組むようになりました。

ご友人の体験談を通して、夫婦の足並みがそろったのですね。そこからどのような経緯で養子縁組に至ったのでしょうか。

不妊治療を約2年間続けていましたが、最初に検査をしてから1年間自然妊娠できなくて。40歳のときに体外受精を3回行いましたが結果にはつながらず、その後、子宮の手術を受けたことをきっかけに、一旦治療に区切りをつけました。不妊治療を止めて約3ヵ月後に自然妊娠できたのですが、流産してしまって。その頃から本格的に養子縁組の話を進めることにしたのですが、コロナ禍に入り、なかなか進みませんでしたね。やっと養子縁組の両親研修を受けられるようになったのは2021年3月、私が43歳のときでした。

養子縁組に申し込むまでの過程で、迷いや葛藤はなかったですか?

そもそも私たちには、“自分の子、他人の子”ということに垣根がないんですよね。もちろん、“私たち夫婦の子どもが生まれたら、どんな感じなんだろう?”という興味はありましたが、それ以上に、自分に今ある環境で人を育てたいという思いがあったというか……。私とは違い、夫は貯金を計画的にして、物も大切にして長く使うような、きちんとしたタイプの人なんです。そういう人がいる環境を、子どもを迎えて育てることに生かしたい。せっかく子どもを育てられる環境があるのに、ずっと2人のままで生活するのはもったいない。そんな気持ちでした。

それは、自分がいる環境を社会にシェアする、ということなんでしょうか。

いえいえ、そんなに大それたことではないんです。すごく根源的な話になるんですが、私は父から「人間は地球上の生物のひとつにすぎない」という教えを受けて育ったんですね。小さい頃から、テレビで地球の歴史を扱った特番があると、父が「はい、みんな来て!」と家族全員をリビングに招集して、一緒に見させられていたんですよ(笑)。その影響か、DNAや遺伝子はあるけど、たまたま同じ時代、同じ場所に居合わせた人とも家族になれる、という感覚が強いんです。だから、“自分の子どもじゃなくても、縁があるならうちに来ればいい”という考えに自然となったんだと思います。

養子縁組の待機家庭が多い東京で 
競わず、焦らず、巡り合わせを信じて待った日々

実際に養子縁組に向けて動き始めた際、里親に登録するまでの流れはどのようなものだったのでしょうか?

各都道府県でルールが少し違いますが、東京の里親制度の場合は、最初に2日間の研修を受けるんです。1日目は「養子縁組とは」という座学を受けて、2日目は、実際に養子縁組をされた方から体験談を聞きました。その後、乳児院での1日実習、続いて児童相談所の職員による家庭訪問がありました。私たち夫婦の普段の暮らしぶりや、夫婦それぞれの家族に対する調査と確認を受けます。自宅環境のチェックも受けて、審査を通過したら、養子縁組里親として登録ができるという流れです。

里親に登録をするまでに数々のハードルがあるんですね。その後は、声がかかるのを待つのですか?

そうなんです。東京の場合、養子候補の子どもが現れたら、待機している家庭に一斉に連絡が届くんです。迎え入れたい家庭が手を挙げて、都の職員がその中から審査を行い、第1選定から第3選定までの3家庭に絞るんです。東京は1人の子どもに対して待機している家庭が多く、多いときには1人の子どもに60件ほど手が挙がることもあるそうです。だから第3選定に入ることすらも難しいんですけどね。

私たちは、ご縁があって子どもが来てくれたらうれしいけど、2人のままでもいいという気持ちでした。ただ、第2選定、第3選定に選ばれた際はすぐに辞退していましたね。第1選定のご家庭が断るのを待つという状況に、心情的なためらいがあり、ご縁があるときに自然に巡り合えたら、とそんな思いでいたので。

そうした気持ちの揺れも経験して、やっと第1選定のご縁があったのですね。

はい。里親登録が2年更新なので、2年がたったタイミングで再度研修を受けて、更新しました。その後、1年たたない頃に「生後6ヵ月の健康な男の子」のご案内があって、今回も難しいだろうなと思いつつ手を挙げたら、職員の方から「第1選定になりました」と連絡があったんです。それから職員の方が写真を持ってきてくださって、初めて子どもの顔を見ました。「会いますか?」と意思を確認されて、「会います!」と即答でしたね。

お子さんと初めて会ったときの印象を教えてください。

2024年の12月に乳児院で面会したんですが、第一印象は、“かわい~っ!!”でしたね。そのときは生後7ヵ月で、表情も仕草もかわいくて。とても社交的な子で、私や夫、都の職員さん、乳児院の保育士さんなど、みんなで囲んでいると、一人ひとりのところに “こんにちは”みたいな感じでハイハイして行くんですよ。最後、私のところに来た後、夫の膝にポンと座ったんです。それを見て、“あ、大丈夫そう”と思いました。抱っこしても泣くことはなく、安心しましたね。

養子は特別じゃなくて普通のこと 
血はつながっていないけど大丈夫、と伝えたい

初対面後は、どのように進んでいったのでしょうか。正式に養子縁組が決まったときの心境も教えてください。

初めて会った後、週に1回2時間のペースで乳児院に面会に行く機会が4~5回ありました。次に、朝から夕方まで乳児院の個室で一緒に過ごし、その後、1週間の予定でうちにお泊まり、というステップでした。社交性のある子だったのですぐに慣れてくれて、職員の方から「大丈夫そうなら、そのままどうぞ」と言っていただき、一緒に暮らすことになりました。そのときは生後10ヵ月になっていましたね。乳児院の担当者からは「こんなに早く慣れて出ていく子はなかなかいませんよ」と言われました。

正式に迎えることが決まったときは、“やったー!”という喜びよりも、“やっと養子縁組の査定から解放された、よかった”という思いの方が正直強かったですね。夫婦2人のままでもいいと思っていましたが、何度も選考に落ちる経験が続くと、どうしても気持ちが沈むこともあって……、“ようやくここまで来られた”という思いでした。

家族が増えたことで夫婦の関係性に変化はありましたか?

あまり変わっていないですね。子どもを迎えたから何かを我慢するようなスタイルにはしたくなくて。夫は今でも趣味のバスケットボールに行っていますし、私も仕事関係のイベントに出かけたりしています。夫婦のどちらかが好きなことをやるときは、どちらかが子どもの面倒を見る、という感じで、お互いのやりたいことを尊重していますね。

それはいい関係性ですね。生後10ヵ月からの子育てで大変なことはありましたか?

3月にうちに来て、6月に保育園入園が決まるまでの3ヵ月間は仕事との両立がしんどかったです。その間、私が営んでいるお店を予約制にして、予約が入ったら子ども連れで対応していました。通販の発送作業もあるので、夕方にお店へ行って発送だけ済ませる、という感じでしたね。おんぶしても、1時間くらいたつと暴れ出す、みたいな(笑)。もう自分のことは何もできなかったです。でも、近所のお店の方が手伝いに来てくれたり、少しの間預かってくれたり、お客さんにも見てもらったりと、周りの助けに支えられて何とか乗り切りました。

養子縁組のことは、お子さんにはどのように伝えていこうと思っていますか?

養子縁組の研修で「子どもの物心がつく最初のうちから、養子縁組で家族になったことを伝えて、“特別じゃなくて普通のことだよ”という認識で育てるのが今のセオリー」だと聞きました。私もその考えに共感しています。だから、たまに子どもを乳児院に連れて行って、保育士さんに会わせて、「ここで育ったんだよ」「このお兄さんにお世話になっていたんだよ」と話しているんですよ。そういうふうに自然と伝えられたらと思います。

お子さんを迎えてから8ヵ月が経ちました。今の心境を聞かせてください。

毎日が充実しています。3月にうちに来たときから、子どもが確実に成長していることを感じられてうれしいです。夫と2人でのんびりしている時間も楽しかったですが、今は“3人で楽しい!”という気持ちの方が強いですね。

それから、家族が増えたことで、将来楽しみなことが増えました。“本当の両親ではなくて、血はつながってないけど、安心してうちにいていいんだよ、大丈夫だよ”ということが子どもに伝わればいいなと思っています。

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